ホーム > 研究紹介

研究紹介

私達の暮らす地球の表層環境は、地球の大部分を占める固体地球と異なり、主に、水素、炭素、窒素、酸素、硫黄、塩素といった軽元素、いわゆる“揮発性元素”から成り、その化合物が、空や海、陸域表層部を構成します。これらは一カ所に留まっている訳ではなく、姿形を変えながら地球表層環境を循環しています。これは「物質循環」と呼ばれていますが、この過程で軽元素は、二酸化炭素やメタンといった温室効果気体に姿を変えて大気圏にいる間は地球を温め、逆に有機物や鉱物に姿を変えて地圏にいる間は、地球を寒冷化させます。その循環の駆動力の多くは生命活動によるものですが、特に、近年の人間活動が地球表層環境の物質循環に与える影響力は非常に大きなものになってしまいました。人口や人間の生活レベルを300年前くらいに戻せれば問題は無いのでしょうが、それが出来ないのであれば、地球表層環境における軽元素の物質循環像を理解し、人間活動が与える物質循環の変化に対し、地球環境がどの程度受け止められるのかを評価しながら、その範囲で生きる道を探っていく必要があります。               

地球環境の変動・変化は、地球上の物質循環の変化と密接につながっており、現在の地球環境問題を考える上で、地球表層環境における「物質循環」の定量的理解は必須の課題です。地球上の物質循環像を明らかにするには、多様な手法が考えられますが、私は、炭素・窒素・酸素・水素といった軽元素安定同位体組成の自然界における不均一をトレーサーとして利用することで、これを解明する研究を行っています。特に、温室効果気体である二酸化炭素、メタン、亜酸化窒素や、大気中の光化学反応を通じて温室効果や寒冷化に間接的に関与する一酸化炭素、非メタン炭化水素類、酸性雨や富栄養化に関与する窒素酸化物といった揮発性成分について、それらの安定同位体組成の定量法の開発と活用に力を注いでおります。