海水 ・陸水中の硝酸の三酸素同位体組成定量法の開発と応用
Triple Oxygen Isotopic Compositions of Nitrate in Natural Waters
北海道大学大学院理学研究科地球惑星科学専攻
大久保 智
Satoru B. Ohkubo
近年、人間活動によって窒素酸化物の大気への排出量が急激に増加している。大気中の窒素酸化物は数日程度の寿命で、オゾンとの光化学反応によって硝酸となって大気から除去され、水圏へと沈着する。水圏中の硝酸態窒素は植物プランクトンによる一次生産の必須元素であると同時に制限元素となっていることも多く、その増加は水圏の生物相に対して大きな影響を及ぼす可能性がある。しかし、水圏に存在する硝酸には窒素酸化物由来だけでなく、有機体窒素の酸化分解で生じる硝化由来の硝酸も多く存在する。さらに、植物プランクトンによる同化や微生物による脱窒といった消滅過程もある。水圏中の硝酸の挙動は極めて複雑であり、仮に水圏の硝酸濃度が増加したとしても、その原因を大気由来硝酸の増加によるものと断定することは極めて難しい。
そこで、本研究は硝酸の三酸素安定同位体組成に着目し、硝酸の三酸素同位体組成定量法の開発を行なった。酸素には三つの安定同位体が存在し(16O