薩摩硫黄島調査

「火山から流れてくる噴気プルームの同位体組成を計測すれば、噴気の温度がわかるはず」というT教官の妄想を検証するため、2002年11月、火山ガスの採取に行きました。

行き先は鹿児島県の薩摩硫黄島です。薩摩硫黄島は「アカホヤ」火山灰で有名な鬼界カルデラのカルデラ壁に生成した東西6km、南北3kmの火山島で、採取可能な火山ガスとしては国内で最も高温の火山ガス(約800度)を山頂部から噴出しています。歴史的には平家打倒に失敗した俊寛が流された鬼界ヶ島としても有名です。産業技術総合研究所の定期観測に便乗して決行しました。

(右図は人工衛星から撮影した薩摩硫黄島周辺の写真。薩摩硫黄岳が放出した火山噴気のプルームが南東の屋久島の方に流れている様子がはっきり写っている。)

薩摩硫黄島の観光用の地図です。噴気は硫黄岳山頂の火口内から放出されています。
鹿児島港と三島村(竹島・薩摩硫黄島・黒島)を結ぶフェリー「みしま」。
鹿児島港出港。バックは桜島。
約4時間の船旅で薩摩硫黄島が見えて来ました。東側から見た姿はまさに火山島、迫力があります。
永良部崎(恋人岬)から港の方向を写しました。港内の海底から湧き出す温泉水中の溶存鉄が酸化されコロイド化するため、海面が赤茶色く変色しています。港の背後にそびえる急崖が鬼界カルデラのカルデラ壁です。
山頂を目指して歩きます。
山頂付近から稲村岳および恋人岬方向を写しています。酒井・松久著「安定同位体地球化学」の裏表紙と同じアングルを狙いました。海岸付近の赤茶色の海面変色は、やはり温泉によるものです。
火口に到着。火口底に降りて火口壁を見上げた様子。一面噴気孔だらけ。雪のように火山灰も舞っています。
火口内は亜硫酸ガスが充満しています。防毒マスクと防護眼鏡、さらにヘルメットに耐熱手袋を装着して作業します。
火口壁に取りついて高温噴気ガスの採取を始めます。右端の産総研の篠原さんの背後が、今回最も高温(約780度)だった噴気地帯です。写真には写りませんでしたが、近づくと岩石が赤熱しているのが見えました。ほとんどマグマです。
高温噴気採取中。周囲の岩が熱いです。
火口底に降りて低温の噴気採取中。
宿に帰ってきた後で、試料の保存処理作業。
作業を終えて海岸の温泉へ(東温泉)。生きてて良かった。